「推し、燃ゆ」読んでみた。
最近話題になっている「推し、燃ゆ」
芥川賞も受賞したみたいで…
しかも、作者の人は私と同世代という…
私はこの本の存在をTwitterのオタ垢で知ったのですが、題名を見た瞬間「これは何としてでも読まなければならない」と思い、そのまま本屋さんに駆け込み、購入しました。
学生時代、読書感想文が嫌いすぎて泣きながら書いていた私がなぜ感想を書いてみようと思ったかというと、こんなに「図星」な本を初めて読んだからです。
ここから少し感想を書いていきたいと思います。
読み終わって言葉が出てくるままに書いているので、文が散乱としていますが大目に見てください…
ネタバレを含まないように全力を尽くしますが、きっと含むことになるので気になる方はここでUターンしてください!
ざっとあらすじはこんな感じです。(公式サイトから引っ張ってきた)
逃避でも依存でもない、推しは私の背骨だ。アイドル上野真幸を”解釈”することに心血を注ぐあかり。ある日突然、推しが炎上し――。デビュー作『かか』が第33回三島賞受賞。21歳、圧巻の第二作。
この物語の主人公はガチ勢中のガチ勢アイドルオタクです。
自分の持っている全てのもの、いや、持っていないものまでも全て推しに捧げています。
また、そんな主人公は推しのことを「私の背骨」であると表現しています。
ある日、推しがファンを殴ったことで大炎上してしまいます。
この時の主人公の心情とか友達との会話の描写や世間の反応とかがリアルすぎてノンフィクションかと思いました。
暴力事件とかはあってはいけないけど、推しと過去に関係をもった女が寝顔付きで暴露とか、どっかのインスタグラマーと匂わせしているとか…重大事件から些細なファンの妄想まで炎上するきっかけは本当に様々。
こんな風に推しがなんかやらかして炎上することって正直、長いことオタクしていると結構な確率でありますよね…
そして、推しが叩かれている間は自分が叩かれてる訳じゃないのになぜか悲しくて、でも推しが悪いことしたのは事実だし…という謎のジレンマに陥ることも多いのではないでしょうか。
まぁこうした炎上(≒スキャンダル)は推しのこれからの活動や進退に関わるからオタクにとっても重大案件ですよね。
同じくこの物語のなかでも一つの炎上が推しはもちろん、主人公の人生も大きく変えることになります。
どう変わっていったかは実際に読んで確認していただきたいのですが、さっきも書いたように主人公が推しにのめり込んでいく様子や行動、心情が本当にリアルなんです。この主人公は本当に推ししか見えない見たくないタイプでしたが、少なからず「推し」という存在がいる人だったら共感できるところが多いのではないかと思います。
例えば作中に「無料で上がっているコンテンツを見て、画質を最高に設定してスクショする」という場面が出てくるのですが、「いや、わしやん」って思わず笑ってしまったくらいです。
反対にこれまで推しなんていたことないわ!という人からすれば、少し奇妙で怖いかもしれません。赤の他人になぜこれほどまで出来るのかと。
ですが、それを可能にしてしまうのが推しなんだとこの本を読んで思いました。
辛いバイトも推しに会えると思えば、ここで稼いだお金で推しのアルバムが買えると思えばちょっと頑張ろうという気になったり…
推しが毎日の支えになっている人はとても多いと思います。
私もその一人ですし。
同じクラスにいる「好きな子」とは少し違う「推し」という存在。
推しに会うためにはお金がいるし、歌声を聞くためにもお金がいる。
言ってしまえば、アイドルという商売の中にある事業者と消費者という関係。
どう表現していいか分かりませんが、とても幸せで悲しくて難しいものだと感じました。
そして、もう一つこの本を読んで感じたことがあります。
それは夢中になることほど怖いものはないということです。
この主人公は、推しに良い意味でも悪い意味でも人生を狂わされています。推しに夢中になりすぎて生活に支障がきたすほどに。
私も推しを愛でる毎日を送り、なんなら推しの話している言葉をリアルタイムで理解したい!!という一心で韓国語の勉強を始めて検定まで受けましたが、まだ(?)推しが日常生活に支障がきたすほど侵食していません(説得力0)。加えてこの主人公が持つ背景や性格なども特殊だったのですが、なぜか他人事としては見れないところがありました。
何か1つのことに夢中になることはすごいことだけど、夢中になりすぎて知らないうちに自分を犠牲にしてしまうことがあるのだなと、気をつけなければいけないなと思いました。
お酒も推しも、適度に楽しむのが良いのだと。
そして、推しは薬に似ているなと思いました。
目的と量を間違えずに服用すれば体にいいが、過剰に摂取すればそれは中毒となり依存してまう。そのうち麻薬と化してしまう…
長くなりましたが、とても面白い本でした。
推しがいる人にとっては共感する点が多く、そうでない人にとっては新しい発見になるのではと思います。そして、読み終わった後はなんとも言えない気分になるそんな物語、いや、もしかしたら現在の世界を表しているなのかもしれないと思いました。